概要
ギリシャ神話の内容
さそり座の支配星としてのベスタ
乙女座の支配星としてのベスタ
ベスタの直径は約530km、公転周期は3.63年。
小惑星ベスタはローマ神話のかまどの女神ベスタ(ギリシア神話のヘスティアに相当する)から名づけられました。ホロスコープにおけるベスタは、重要な仕事に対する強い使命感や、何かを犠牲にしてでも目的を達成しようとする意志を表します。
占星術的にベスタは、個人の仕事、献身、精神的な修養、責務、犠牲、孤独、個人的な関係からの疎外、さまざまな性的コンプレックス等の問題に関連します。
クロノスの長女ヘスティアは、ギリシア神話では殆ど活躍しません。そのかわり、ギリシア人の日常生活において最大の栄誉を受けていました。なぜなら、ヘスティアという名称はかまどを意味し、かまどとかまどの火の守護神として、全ての家の中心で祀られていたからです。ギリシア人が酒盛りを開くときには、最初と最後にヘスティアに献酒する習慣があり、しかるべき手順を踏んで事をなすことを、「まずヘスティアからはじめる」と諺でいうようになったほどです。
家々の中心にかまどがあったように、各々の都市国家(ポリス)の中心にもポリスのかまどがありました。遠い世界へ植民に乗り出すときなどは、ギリシア人はそこから聖なる火をもって出発したのです。
ローマ神話でヘスティアに相当するのはウェスタです。ヘスティアと同じく、かまどの火を守る処女の女神でした。ウェスタに仕える巫女はウェスタの処女と呼ばれ、高い地位を与えられました。彼女たちの務めの神聖さゆえに、禁欲を破った巫女への処罰は厳しく、わずかな水と食料を与えられながら生き埋めにされるという残酷さでした。
処女の女神であるベスタは、乙女座の支配星です。ベスタはまた、さそり座と強い親和性を持っています。乙女座とさそり座へのベスタの二重支配は、これらの天文学的起源を探ると明らかになります。
アッシリアとバビロニアの文化によって大まかに描かれた元の黄道帯では、さそり座は蛇に象徴され、乙女座のすぐ後に続いていました。現在の天秤座と呼ばれるものは、さそり座に含まれていました。乙女座とさそり座の絵文字はデザインが似ており、違いは微妙です。乙女座の絵文字では、母親のMが内向きに曲がり(♍)、さそり座では母親のMが外向きになっています(♏)。そのため、古代の地母神は、乙女座の貞操とさそり座の性行為を同時に支配しました。家父長の文化の登場とともに、結婚のサイン天秤座は、乙女座とさそり座の間に置かれました。それ以来女性は、結婚前に貞操を守る(乙女座)か、結婚後に性交を行う(さそり座)かのいずれかになりました。
家父長制が権力を獲得するにつれて、女性への強力なタブー視が、婚前の性行為、婚姻後の不倫、私生の子供・中絶に対して向けられました。要するに、結婚していないセックスは許されない罪になりました。これは、精神性(乙女座)と性行動(さそり座)の人為的な分離を生み、数千年人類の集合意識において生き続けました。それゆえ人々は、性的欲求に対して恥や罪悪感、自己否定を経験し、これが性的タブーの起源になりました。
最近のベスタの発見は、元型の乙女座-さそり座のテーマを再現することにより、この不健全な分裂を治癒する手段をもたらしました。
このため出生図で強調されたベスタを持つ人には、性的に活発なケースが男女ともよく見られます。
女性では、既婚・独身に関わらず、さまざまな異性と性的な関わりをします。しかしその性的結合の性質は決して世俗的ではなく、精神的・治癒的といえるものです。それは、無意識のうちにベスタの処女の古代の性的儀式を再現しているかのようです。これらの儀式では、処女たちは夫を捕えるためではなく、月の女神に仕え、人間の帰依者の命を祝福するために性行動を使用しました。しかし、現代社会はこれらの動機の純度を無視し、オープンな性的表現を不道徳で邪悪なものとして非難します。この非難は内面化され、現代のベスタたちは、性的反応に対して罪悪感と恥を経験します。
男性の場合も同様です。ベスタ型の男性は女性の性的欲求に対する感受性が高く、性行為への強い願望を持っています。同時に彼らの“バージン”な性質は、彼らを自分自身の方へとどまらせ、長期的な関わりを避けさせます。
したがって強力なベスタは、性的拒否、婚外の性交、極端な場合には乱交・売春など、さまざまな性的表現を指向する可能性があります。
またベスタの強調された人には、潜在的にセックスへの恐怖があります。この恐怖は、貞操を破ったウェスタの処女が受けた非道な刑罰にさかのぼれます。
ウェスタの処女が味わった苦痛は、現代の男性・女性の精神に持ち越され、多くの人々は、性行動への恐怖、人間関係からの疎外感、そして不妊を経験します。
ベスタの本質が神聖な性的儀式に象徴されたように、ベスタのタイプは、セックスの潜在的な記憶を、精神的な努力の経験として運ぶので、性に対して非常に高い基準を抱きます。超越的なセックスを求めるため、平凡なセックスには満足せず、関わりたがりません。
このような性的理想主義は、周囲の人々から誤解されることが多く、彼らはベスタタイプの人が冷たく、不自然で、性的関心がないと非難します。そして自分の性的分別の動機を理解していないベスタタイプの人は、これらの非難を正当なものとして受け入れてしまうのです。つまりベスタは本来、性行動を精神的な献身の現れとして表現します。しかし彼女は、現代の精神的風土によって歪曲されてしまいます。その結果、性的関わりへの拒絶・恐怖、性的不能、独り身、不妊、乱交、本能の抑圧による様々な性的困難を表すことが多いのです。
ベスタの本質はかまどの炎に体現されています。かまどのラテン語は「焦点」を意味します。
「焦点」のようにベスタは、エネルギーを集め、それを単一点に持ち込み、それにより明瞭さと証明をもたらします。つまり処女という言葉の元々の真の意味は、自己のアイデンティティを中心を置き、集中し、没頭する性質です。これは乙女座の性質といえます。
ホロスコープで顕著なベスタを持つ人は、エネルギーを焦点に集中させ、自分の行動全てに完全な注意を向ける能力を持っています。一方ベスタにハードアスペクトが多い場合、焦点は漠然とし、不明瞭でぼうっとしています。別の極端な場合、焦点はあまりにも窮屈で、狭い心と制限された視野を持つ可能性があります。
ベスタが強調された人は、性的なエネルギーを一点への焦点、遮るもののない関わり、働くための献身に昇華させ、変換することができます。変換されたエネルギーは個人的な統合をもたらします。これらはすべて乙女座の特徴です。
一つのことに集中する行為は、人生の他の領域から撤退する必要を意味します。これは、世界からの疎遠と疎外をもたらします。占星術的にベスタは、個人的な探求に没頭し過ぎる時に生じる重度の疎外のタイプを暗示します。
ベスタはまた、自己のアイデンティティを全うするために、犠牲を払う必要があることを示唆します。これらの犠牲には家族・子供・人間関係・友人・家庭のあきらめなどがあります。
前述のように、乙女座とさそり座は同じ根の本質から派生しています。したがって肥沃な乙女ベスタは、創造のプロセスを神聖化する献身的な合流に備えるため、巡回的に退去するのです。