海王星が発見されたのは1846年でした。
ヨーロッパでは芸術文化が花開き、映画が生まれ、オカルト学や神智学が広まり、フロイトによって無意識の概念が提唱され始めました。
また資本経済が発展した結果、株などの信用取引が盛んになりました。人々が目に見えない物事に価値を置きはじめた時代なのです。
目に見えない価値ある物事や、芸術や理想、信用や未来に対する希望など、すべての幻想的な物事に影響を与えるのが海王星の作用です。
海王星の影響は天王星よりも意識しにくいのですが、確かにひとつの社会が持つ希望や大志と関連しています。
海王星が表す希望とは、人々の集合無意識の理想や望みであり、それは金星のより高次の集合的な力にあたります。
海王星の集団幻想は、夢や快感を求める人々の意識によって生み出され、それは時代の憧れや流行をもたらします。
海王星がサインを移動するとき、世界の夢は根本的に重要な変化を遂げます。
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獅子座 | 乙女座 | 天秤座 | さそり座 |
射手座 | 山羊座 | 水瓶座 | 魚座 |
獅子座に海王星がとどまっていた時代に、社会の夢の焦点は個人へと向かいました。
獅子座のエネルギーは分け与えること、寛大で愛情深くなること、そしてその見返りに認められ評価されることを求めます。海王星が獅子座を通過する間に、人々は認められ評価され、スポットライトを浴びることを夢見ました。
この時代は映画産業が最も著しく急速な発展を遂げた時期にあたります。
獅子座の表現力・賞賛欲求は、海王星が支配するフィルムや映像芸術の領域で開花したのです。
これはアメリカだけでなく日本でも起きた現象でした。第1次世界大戦が終結してハリウッドの映画会社が日本に進出してきました。その影響もあり、日本でも映画会社が次々に設立されました。1923年の関東大震災を挟んでも映画産業の勢いは衰えませんでした。
獅子座の象徴的なやり方で映画スターが誕生し、人々の夢の対象となりましたが、最終的には破滅へ至りました。
より個人的な影響としては、新しい時代のリーダーになるという大きな夢を持ち、冒険的でダイナミックな人生を志向します。
スケールの大きな想像力を演劇や芸能に生かす人もいますが、ふつうは有名人や芸能界に強い憧れを抱くにとどまります。
また、ほとんどモラルが存在せず、やりたくなったらどんどん行動に移す傾向があります。
乙女座のエネルギーは、世界をより良い場所にするために、惜しみなく与え奉仕するものです。
海王星が乙女座に入りはじめた頃に吹き荒れた世界恐慌は労働者や政治体制に大きな変化を起こしました。
恐慌下において労働者は必然的に労働組合への志向を強め、そこに奉仕(乙女座)への夢(海王星)を重ね合わせました。現在も残る産業別の労働組合の仕組みはこの頃に出来上がり、労働者は権利を獲得していきました。
一方で、奉仕の上に築かれる完璧な社会という夢はドイツではヒトラーを神格化させ、結果として大虐殺を生み出すことを許してしまいました。
ヒトラーのもっていた人種差別思想も分析力(乙女座)の幻想(海王星)と考えれば、この時代に波及した海王星の影響がみえてきます。
ナチスに象徴されるファシズムは閉鎖的な経済政策をとり、産業を国の管理(乙女座)下に置きました。
より個人的なレベルでは、乙女座の海王星をもつ世代は完璧な世界を築くという夢を持ち続けます。
完璧な人間になれば人としての苦しみがすべて解消するという幻想を抱きやすく、清廉潔白な人物や聖者、天才と呼ばれるような人にあこがれます。
人間的な欲求を疎ましく感じ、苦行や禁欲などに取り組む人もいるでしょう。
また、医学的に認められていない健康法や治療法にはまる人が多いのも特徴です。
天秤座に海王星がとどまっていた世代の人々は、平和を訴える政治家を支持し、いわゆるヒッピー文化を生み出しました。
しかしこのムーブメントは天秤座・海王星の時代を獅子座・冥王星の時代(1938-1957)が覆い尽くしたこととも関連しています。
天王星の海王星に生まれた世代は、バランス、調和、関係性に関連した理想を唱えます。
調和や関係の理想は、特に人間関係において提唱されますが、芸術・音楽・霊性を通した表現の中にも主張されます。
それは個としての自己感覚と宇宙の創造的な力の間に調和をつくり出す動きでもあります。
ヒッピーはベトナム戦争に反発した若者が中心となり、戦時下のアメリカで一大ムーブメントを起こしました。自然と平和と歌を愛し、人間として自由に生きるというスタイルで、各地にコミューンと呼ばれるヒッピー共同体が誕生しました。彼らは伝統的な社会や制度を否定し、個人の魂の解放を訴えました。
ヒッピー共同体が象徴するように、彼らは他者との融合(海王星)と、個性を尊重した一対一の関係性(天秤座)の理想的な調和を模索しました。
そして理想的な人間関係だけでなく、音楽やドラッグを通じた精神解放を求めたのです。
より個人的なレベルでは、この世代の人々は他者に過剰な幻想を抱くため、対人関係における距離の取り方があいまいになります。
結婚や結婚相手にも過剰な期待を抱きがちで、結婚生活においては、不道徳な行動をとりやすいでしょう。
また趣味的な生活と実生活との境界がなく、個性的なライフスタイルをもつ人が多いといえます。
さそり座に海王星がとどまっていた時代には、今まで抑圧され隠されていた物事に人々が関心を持ち、タブーが取り除かれ始めました。
死後の世界やオカルト、超常現象などがブームとなり、性に対する幻想も強まりました。性風俗産業が流行した時代でもあります。
世界的に見ると、この世代は逃避としてセックスを乱用した最初の世代です。
1980年代にエイズ・ウイルスが登場したとき、彼らはセックスの乱用に潜む影響が露わになり衝撃を受けました(エイズ・ウイルスの現象自体は、1983年頃の冥王星・さそり座入宮とも関連します)。
さそり座は自己の変容にもかかわるため、人々は霊的なつながりを見つけるために自己の内奥へ目を向けることになりました。
この世代はマニアックな世界に強い関心を持っており、そのことにある種の選民意識を持つ人もいます。
スピリチュアルや深層心理への興味から現実逃避的になりがちで、それが行き過ぎて狂信的な集団とかかわるケースもあります。
射手座の海王星に生まれた世代は組織的宗教が作り上げてきた枠組みの崩壊を目の当たりにします。
制度化された枠組みを通して霊的なつながりを見出すことは、この世代にとっては難しいことです。
彼らが関心を向けるのは、創造的なやり方によって宇宙との関係を理解し説明する方法を見つけていくことなのです。
射手座・海王星のエネルギーは世界中に、枠組みから外れた宗教(カルト教団)の種をまき散らしました。
カルト教団は海王星が山羊座に入るとしばらく地下に潜伏し、1995年にこんどは冥王星が射手座に入ると突然世に現れて、人々を恐怖に陥れました。1995年3月オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こしたとき、冥王星は射手座の1度を逆行していました。
この流れはさそり座の海王星に生まれた世代が、冥王星のさそり座入宮とともにエイズウイルスの恐怖にさらされた状況と似ています。
より個人的なレベルでは、この世代の人々は精神の自由を得るために、目前の現実から離れて遠い世界へ向かうことを望みます。
具体的には海外移住やスピリチュアルな思想に夢を抱く人が多いでしょう。
また宇宙開発やUFO、超古代文明などにイマジネーションをかき立てられる人もいますが、一方で現実社会には不適合になりやすい傾向があります。
山羊座に海王星がとどまっていた時代には、政治体制の崩壊や指導者の世代交代、民族の独立運動などで世界は混乱しました。
1990年には東西ドイツが統合され、翌年にはソ連邦が解体されました。
山羊座・海王星の集団的な夢は、冷酷な野心家となり、可能な限りの物質的富や社会的地位を築くことも関係しています。
1985年のプラザ合意により為替介入が容認され、それを遠因として日本はバブル経済に突入しました。
バブル景気は富を増大させようとする人々の夢を刺激し、実体のない空想のように膨らんでゆきました。
しかし1992年頃から陰りが見え始め、1995年に冥王星が射手座に入ると、拓銀・山一証券などの金融機関が相次いで破綻し、山羊座・海王星の夢もはじけてしまいました。
より個人的なレベルでは、この世代の人々は社会的権力や肩書きへの強烈なあこがれをもちます。一方で放浪の生き方に社会的ステイタスを感じる人もいます。
いずれの場合も社会における夢の実現が人生のテーマとなります。
人によっては夢に満ちた壮大な社会的事業にかかわったり、その手段として政治家になったりするでしょう。
水瓶座の海王星はユートピア(理想郷)の社会を夢見ています。
それはすべての人々が真に平等となり、自分の人生をどう生きるかを選ぶ権利がきちんと守られる社会です。
水瓶座のエネルギーは自由、人と人のネットワーキング、シンクロニシティ、サイバーな非感情性などを表しています。
この時代にはグループ(水瓶座)のバーチャル化(海王星)に進展がみられ、人間関係の末端があいまいな社会が形成されはじめました。
具体的には、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスは、水瓶座・海王星の夢見た共時性のユートピアを実現しました。
この時代の終りには東日本大震災が発生しました。震災直後にはツイッター等による情報交換が重要な役割を果たしました。
より個人的なレベルでは、この世代の人々はインターネットなどを介して国籍や人種を越えたつながりを広げることに夢を抱きます。
共通の趣味や思想を通じてオープンな集まりを形成する傾向がありますが、組織の維持に関心が薄く、あっさりと関係が解消されることも少なくありません。
結婚についてもそれは同様で、簡単に離婚するような人が多いといえます。
2011年の4月5日に海王星は魚座に入りました。いったん水瓶座に逆行したあと、2012年に再び魚座に入りました。
海王星は魚座の支配星なので本来の性質が最大限に発揮されます。東日本大震災の1ヶ月後に海王星が魚座に入った事実は、その復興と無縁ではないでしょう。
国内はもとより、被災地と縁もゆかりもない世界各地から援助の手が差し伸べられました。これは国境や人種や宗教・思想を越えて、人々が宇宙の集合意識とつながった状況と考えられます。
より個人的なレベルでは、この時代には時間にも空間にも縛られない魚座及び海王星の本性が発揮され、どこにも何ものにもとらわれないで自由に行動する人が増加するでしょう。
彼らはあらゆる制約を無視して自由に広がるイマジネーションの持ち主であり、スピリチュアルな世界も当然のごとくに受け入れるでしょう。
一方で、時代の空気にも影響されやすく、流行に飛びつくような人が多いでしょう。
自己犠牲的な精神にロマンを感じる傾向もあります。