カイロン(Chiron:キロンともよばれる)は1977年に発見された最も新しい天体です。
新しい天体が発見されたとき、占星術はその天体が発見された時代精神を、その天体の意味とみなします。
1978年に英国で成功した体外受精から、カイロンに与えられた意味は「高度な医療」となりました。
下のホロスコープは体外受精から生まれた子供のものです。
生まれた瞬間を表すアセンダントにカイロンが近接しています。
カイロンとアセンダントの合は高度の医療が必要になる状況を示していて、この子供の出生後の現実と符合します。
一般にホロスコープにおけるカイロンは「心の傷」をあらわします。
それは子供の頃に囚われたトラウマやコンプレックスかもしれません。私たちの痛みや恐れ、最も弱い部分をカイロンのサインやハウス、アスペクトは表しています。
カイロンの影響は、傷の経験により痛みを味わい、傷を癒すことで浄化されるまでの一連のプロセスです。カイロンは傷の癒し手、ヒーラーでもあるのです。
土星と天王星の間に公転周期をもつカイロンは、宇宙的な真理をもたらす土星外天体と、物質的な拠点である土星との橋渡し的な役割を果たします。
そのため、カイロンは傷のプロセスを経験させるだけでなく、人生で探求すべき霊的な問題を人々に投げかけます。傷を癒すための努力を通して、宇宙の真理につながるのです。
各サインにおけるカイロンは、どのように傷つけられ、傷ついた結果どのように他者を傷つけてしまう傾向があるかをも示しています。
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牡羊座 | 牡牛座 | 双子座 | 蟹座 |
獅子座 | 乙女座 | 天秤座 | さそり座 |
射手座 | 山羊座 | 水瓶座 | 魚座 |
ハウスはこちら→カイロン×12ハウス
牡羊座のカイロンをもつ人は、自分らしさとリーダーシップに関して傷つけられた感覚をもちます。
牡羊座のカイロンは、自らが求める自由で直感的な自己表現がときに困難なことを知ります。
そして痛みをともなう感情や、霊的なつながりをたびたび経験することになります。
さらに、深く根源的なアイデンティティ(自己同一性)の危機を、霊的なレベルで経験することもあるでしょう。
アイデンティティの危機に苦しみそれを克服しようとしたとき、それは自らの魂との同一性を発見し、取り戻すための努力となります。
そのプロセスを通じて、意識的あるいは無意識的にリーダーシップをとる才能を発見するでしょう。
牡羊座のカイロンは自分自身の答えを見つけることで、自己探求へ向かう人々の道を照らし、自分自身の傷を癒していくのです。
牡牛座のカイロンは、物質的な面での価値に関する傷と関係しています。
それは価値、評価、物質的な面での忍耐力に関して、さらには自分の体、個人としての価値、自己イメージに関して、重要な問題を抱えます。
あるいは、肉体や感覚の喜びを楽しむことと関連した痛みを示すこともあります。
ある人は両親の離婚によって幼い頃に親と離ればなれになり、喪失感を味わうでしょう。
またある人は親が有名人か有力者であったために、自分の価値が小さく見えてしまうでしょう。
あるいは先天的な持病をもっていたり、貧しい家庭に育ったりしたために、生活の苦しさを味わうかもしれません。
これらの傷と向き合い癒すことは、物質的次元における真の霊的要素を発見していくことへとつながります。
真の癒やしは自己の内面的な安定を追求することによってもたらされます。そして制限され限界もある、変わりゆく肉体に対しての不安を乗り越えていくのです。
双子座のカイロンは選択を行う能力に関する傷をあらわします。
それはどんな状況でも善と悪、光と闇があるという二元論を前提とします。
好奇心に満ちた双子座のカイロンには選択を迫られる状況がしばしば訪れ、そのたびに間違った選択をするリスクを負うことになります。
このリスクは、個人の根本的な世界のとらえ方、この世界の仕組みの理解とも関係しています。
双子座カイロンの傷と向き合うとは、探求する方法をあらためて学び直すことなのです。
別の可能性、別のとらえ方、別の選択肢へと自ら心を開いていくことによって、その人はカイロンの傷を癒し始めることができます。
そして最終的には、より強くより豊かな霊的つながりを見つけ出すことになるでしょう。
蟹座のカイロンは養育すること、養育されることと関係した傷をあらわします。
蟹座のカイロンの傷と付き合うためには、根本的な生存の恐れと向き合っていくことが求められます。
蟹座のカイロンは過度の貧困をもたらし、たえず他者のサポートや保護を求めることがあります。
しかし、どれだけの愛や支援が与えられたとしても、決して満たされることはないでしょう。
蟹座のカイロンは傷が癒されるまでは、愛や支援を本当の意味では受け入れられないか、あるいは安心や安全を真に感じることができないからです。
また蟹座のカイロンの影響は、他者への誠実な介護者や世話人となり、他者から決して見返りを受け取らないという形で現れることもあります。
それは自分が与えるのを止めたなら、他者も見返りを与えてくれなくなるだろうという恐れからくる行動です。
いずれの場合も、蟹座カイロンの傷が生存欲求が満たされないことへの根本的な恐れであることを示しています。
しかし、生存の恐れとは幻影に過ぎないのです。
私たちと宇宙はつながっていて、私たちの求めるものは常にいつまでも満たされていきます。
その理解に達したとき、蟹座のカイロンは真の豊かさのための霊的な法則を学ぶ機会を与えてくれるでしょう。
獅子座のカイロンは、自分という存在を他者が認めてくれないという恐れをあらわすことがあります。
その恐れは結果的に、独創的であろうとすること、または自分を過剰に捧げることに関する痛みや困難に発展します。
獅子座のカイロンが出会う恐れや躊躇は、しばしば信頼という問題と結びついています。
そもそも獅子座は自己の創造性を表現する場所であり、自分を惜しみなく分け与える場所であり、自分の固有の能力を認めるよう他者に要求する場所。
獅子座のカイロンをもつ人は、自らの心を開き、本当の自分を他者と共有するための意識的な努力をすることにより、自らの独創性と独自性がある場所を発見できるようになります。
そしてもし恐れを克服し、他者との結びつきを心から信頼できるならば、そのとき同時に、どうやって信頼と愛に心を開いていけばいいのかを人々に示すことになるのです。
乙女座のカイロンは分析と奉仕に関連する傷をあらわします。
乙女座のエネルギーは、それが支配する腸のように、価値のあるものを取り分け、価値のないものを排除しようとします。
乙女座のカイロンをもつ人は、このような分析と査定と分離に関する一連の手続きに恐れをもっています。
それは、世間の人々の価値を評価したならば、仕返しとして自分の価値も世間の人々から査定されてしまう、という恐れです。
また彼らにとって本当の意味で奉仕することは困難なことかもしれません。
乙女座のカイロンをもつ人は、償いの気持ちや忍耐心にまかせて奉仕に取り組みがちなため、自己犠牲という乙女座特有の状況に陥りやすいからです。
他者に奉仕する本当の意味は、傷の核心部分にあります。
つまり、私たちはみな一つであり、あらゆる分離は幻想なのです。自分自身を惜しみなく他者に与えるとき、実際は自分自身へ与えているのです。
なお、乙女座のカイロンの傷は肉体的な困難、慢性的な健康問題として現れる場合もあります。
この場合は自分の体を癒し、理想的な状態にするための方法を学ぶことになります。
天秤座のカイロンは人間関係と関連する傷をあらわします。
それは相手に染まりやすい性質を持つがゆえに、個としての自分らしさを相手に侵害されてしまうという恐れです。つまり対人関係におけるアイデンティティの問題です。
この恐れを乗り越えて人間関係の真のバランスと調和を維持することが、天秤座のカイロンの癒やしとなるのです。
そもそも彼らは境界線を侵害するようなパートナーに惹きつけられるところがあります。
さらにそのパートナーの望みに合せて従っていくため、自分自身が求めるものや自分らしさが否定されてしまうこともあります。
ある人は自分が支配的な立場になることで、カイロンの傷を表出しようとするかもしれません。
しかしいずれにしても、不均衡な関係からは天秤座カイロンの傷は癒されません。
カイロンの傷に向き合う勇気をもって、真に協力的でパランスのとれた関係を築こうと決意した人にのみ、健全な関係性を維持するための方法が見出されるのです。
さそり座のカイロンは深い変容を促す感情の問題に関する傷をあらわします。
この傷は自己の価値に関する感情的な問題にも関連するため、彼らは自分の心のなかへと深く入っていくことは避けようとします。
彼らはより喜びに満ち安定した経験にのみ目を向けていくことで、自分の傷の誘発を避けることができるかもしれません。
しかしさそり座の影響は表面下の奥深くに作用するため、傷の回復と霊性への鍵は心の奥底の根源的なレベルに潜んでいます。
一旦、彼らが感情の最も深い部分や無意識の深層へと向かっていくことを選び取るなら、現世と過去世の両方からの強力なトラウマや傷を癒し、取り除いていくことができるでしょう。
結果として生じる変容は、他者との真の感情的つながりを経験させ、また真の霊性との再結合を回復するための力となるのです。
射手座は真実の探求と関係し、通常はそれを高等教育、宗教、哲学の領域を通して表現します。
また個人の自由を肯定し大きくしていく教え、宗教、信念と関わるよう強く促されます。
射手座のカイロンをもつ人は「自分らしさ」に関する傷をもち、社会での自分の居場所を理解し受け入れていくことに苦悩します。
彼らのなかには、信じていた思想体系が根本的に傷つけられてしまった人もいます。
あるいは、理想や必要となる行動の方向へ完全に身を委ねられない状態の人もいます。
従うべき大義を探し求めて試行錯誤し、波乱の人生を歩む人もいます。
また真実の生き方の探求がかえって自分の無価値感を際立たせてしまうと恐れて、何もできない人もいます。
射手座のカイロンと向き合うためには、自分の個としての価値や意義に信頼を置くことが求められます。
わたしたちが創造物の真に欠くことのできない本質的な部分である、という究極の真実を知ったときに、「自分らしさ」の傷は癒され始めるのです。
山羊座のカイロンは責任と関連した傷をあらわします。
彼らは人生の中で、自分の行動が他者に影響を与えることに対する責任を負うことを学びます。
あるいは、責任が終り、あきらめなければならない場所があることも学びます。
彼らは自分自身に、自分の選択に、自分の行動に、そして行動の結果に責任があることを学びます。
つまり山羊座のカイロンが示すのは、自分が本当に責任を負う領域とそうでない領域の間をはっきり区別するということなのです。
彼らはその境界線を明確に引くことに、しばしば困難を感じます。
自分の人生に対しての責任を負うことを避けるがゆえに、他者を助けることに夢中になる人も多いのです。
このような人にとっては、自分の人生への責任を受け入れ、そして他者にも同じことを行う機会を与える勇気をもったときに、傷は癒されはじめるでしょう。
水瓶座のカイロンは集団との同一性に関連する傷をあらわします。
この傷は、社会で通用している基準に従わなければならない状況、個人の自由を表現することへの障害、他者の前で自分の独自性を見せることへのためらいとして現れることもあります。
基本的に水瓶座のカイロンは、自身の社会的重要感が傷つけられたという感覚を持つ人々を示します。
この傷を癒すことへの鍵は、人道的な思想を追求するような集団での活動にあります。
社会との交流を通過していくことにこそ、回復と霊的なつながりへの道があることを、水瓶座のカイロンは示しています。
自我を取り払う必要がある活動に従事することは、自らを癒すためのきわめて優れた方法となり得ます。
彼らは、自ら選んで加入した集団内で、対等なメンバーとしての適切な場所を獲得します。
それによって集団意識とつながり、自我の制限から自分を解放するための方法を学べるのです。
水瓶座のカイロンの影響を際立って受けている例として、久保田早紀さん(『異邦人』などでシンガーとして活躍後、クリスチャンとしての音楽伝道活動に転じる)、田代まさしさん(度重なる覚醒剤乱用による逮捕・収監の後、薬物中毒者への啓蒙活動に転じる)がいます。
魚座自体に癒やしという意味があります。
魚座のカイロンをもつ人は生まれながらに人々を癒すことができます。それと同様のやり方で、自分自身を癒すための方法を学ぶ必要があります。
魚座のカイロンをもつ人は、自己犠牲的な気持ちにとらわれるかもしれません。彼らは同情心にあふれるため、他者を助けたり癒したりする行為に惹きつけられるでしょう。
しかし、癒やしを達成するためには数々の不快な思いを経験するかもしれません。他者を癒すためには、他者の否定的な感情を吸収し変化させるという大きなエネルギーが必要だからです。
そのエネルギーは自分自身を癒すことにも振り向けましょう。
自分の傷の痛みを昇華し、変容させ、乗り越えることで、感情と魂のレベルで起こるヒーリングの最終段階を完成することができます。
すべては集合的なものの一部であり、本当は境界などなく、愛と生命の究極の根源から切り離されているわけではないという認識へと再び到達するのです。