冥王星が発見されたのは1930年のことです。
時代は1929年にはじまった世界恐慌の真っ只中。経済状況が崩壊し世界各地で戦争が勃発したこの時代の空気は、冥王星の性質を象徴しています。
冥王星は究極の破壊者であり、もはや役に立たなくなったあらゆる体制を取り壊してゆきます。
冥王星が通過するサインは、強力な転換がうながされ、戻ることのできない変化をこうむる領域を表しています。
冥王星は、人々の意識の奥底に抑圧された無意識を実体化する力と考えられます。無意識とは、現実に抑圧された現実とは正反対の意識であることが多いでしょう。
そのため、冥王星のもつ抑圧されたエネルギーが限界を超えたときに、それまでの意識を強制的に破壊し、根底から覆してしまいます。冥王星のエネルギーは火星のより高次の集合的な力といえます。
冥王星の影響力は個人の運命よりも、時代の社会的な運命に作用します。
しかし冥王星が太陽や月などと同じサインに位置するかメジャーアスペクトをとる場合、冥王星の力は個人の運命に作用し、人生を全く違う方向へ変える程の影響をもたらします。
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蟹座 | 獅子座 | 乙女座 | 天秤座 |
さそり座 | 射手座 | 山羊座 |
冥王星は1930年に蟹座で発見されてから、1939年まで蟹座にとどまりました。
冥王星の力は、蟹座が表す愛国心の裏返しとして、他民族の存在を否定し排斥しました。
有名な例としてはユダヤ民族迫害があげられるでしょう。
蟹座のエネルギーは、人々をどのように養育し保護していくか、そして一般女性、特に母親の社会での役割と関連しています。
1929年の大恐慌により経済状況が破綻し、民衆の生活は満たされなくなりました。
人々は安定した生活保障をなくし、失業者が増加、その結果、世界は戦争へ突き進むことになりました。
恐慌と戦争によって、人々は蟹座に象徴される故郷や家族、安定した生活を失ったのです。
国土は荒廃し、生活は余裕を失ってすさみ、食糧事情は困窮しました。
この時代に生まれた人々は、人生のどこかの時点で家族など愛する人や心から大切に思う物事とのつながりを絶たれるような経験をするでしょう。
そのトラウマを癒すために、失ったものより大きな集団に同化し共通の利益のために働くことを望みます。
極端に排他的な愛国主義思想などに深入りする人も少なくありません。
冥王星が獅子座に入るとすぐに、第2次世界大戦がはじまりました。
このことは獅子座が示す権力に抑圧されていた人々の不安を増幅させ、一方では支配者の権力欲を更に強めて、戦争を激化させました。
核兵器の使用は人々の想像を超える破壊をもたらし、戦争を終結させました。
冥王星の刷新力は絶対的な支配者や国家権力者の交代を強制し、権力構造を根底から変えました。
より個人的なレベルでは、この世代の人々は支配されることを嫌うため、横暴な一面を感じさせがちです。
個人の独自性を発揮できないような状況に置かれると、著しくフラストレーションがたまります。
そしてフラストレーションが限界まで達したとき、反動的に派手な自己表現がなされるでしょう。個性の自由な表現として過激な行動をとる人もいますが、ウケ狙いの笑えるキャラクターとしてその影響が現れる人も多くいます。
乙女座にとどまった冥王星は、それまでの国家管理体制やモラルや教育を大きく変えました。
管理効率や作業能率を上げるために、分業化が更に進み、人々は大きな組織の歯車として意志を失った存在となっていきました。
古い管理体制は意味を為さなくなり、人々は社会に対する明確な義務やモラルを失ったともいえるでしょう。
またこの時代には、医薬や科学技術が飛躍的に発展しましたが、同時に薬害や公害が問題化し、それらは人々の健康や環境を破壊しはじめました。
より個人的なレベルでは、人生の途上において個人が管理できる範囲外の出来事が起こり、ただ状況に流されるしかないという経験をするでしょう。
縁ある人とのチームワークによりそれを乗り切る人がいる一方で、強迫的なまでに神経質な自己管理に走る人もいます。
仕事や義務について真摯に探求した結果、革新的な仕事法を開発する人も少なくありません。
天秤座にとどまった冥王星は、結婚に対する観念や対人関係の規範や考え方を大きく変えました。
天秤座・冥王星は社会的な形式のために抑圧されていた人々の感情や意識を解放したのです。
旧来のように、神の前で厳かな誓いを立てる結婚は少なくなり、あるいは誓ったとしても旧来のような強制力はすでに持たなくなりました。
結婚の契りの形骸化は従来の結婚の概念を破壊し、離婚や同性愛などを許容する新たな結婚の枠組みとして再生されました。
人々は社会制度のうわべと実態の食い違いに気づき、社会的な形式に価値を求めなくなり始めました。この世代の人々は結婚や社会制度に根本的な不審をもつ傾向があり、その結果、社会的責任感が欠如する場合もあります。
より個人的なレベルでは、対人関係への潜在的な恐れがあり、それが極端な場合には引きこもりになることがあります。
対人関係への恐れと真摯に向き合うことで対人的な積極性がよみがえりますが、こんどは逆に騒がしいキャラクターになってしまいがちです。
また別居婚など特殊な結婚形態や、出会い系サイトの利用など実験的な対人関係に抵抗感がありません。
冥王星がさそり座にとどまった時代には、エイズや癌、その他の難病が人間の生命を脅かしはじめました。
先進国では出生率が低下し、今までタブーとされてきた試験管ベビーや、様々な死の問題が取りあげられはじめました。
特にこの時代に蔓延したエイズ・ウイルスは、セックスに対する見解を根底から覆しました。
より個人的なレベルでの影響としては、この世代の人は人生のある時点で閉塞された精神状態に追い込まれ、そこから逃れるために自殺まで考えることもあります。
しかしその苦しみと対峙し決して逃げないことで、「魂の新生」というべき精神の変容が起きるでしょう。
そして生きることの喜びを親しい人々と分かち合うことに生きがいを感じるようになります。
冥王星が射手座に入ってすぐに、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こりました。
これは宗教組織(射手座)による破壊行為(冥王星)であり、人々の宗教集団に対する考え方を一変させました。
この時代に組織的宗教は困難な課題に直面しました。ますます多くの人がより直接的な霊的な道を探し始めたのです。この時代に盛んになったスピリチュアルブームがそれを物語っています。
より個人的なレベルでは、壮大な理想に基づいた実験的な試みが、競争に勝つことへの過剰意識によって挫折するような経験があるでしょう。
それは悲劇的な出来事ではありますが、限界に達して疲弊しきったときに肩の力が抜け、遊び感覚のある自由闊達な精神を取り戻せることがあります。
また、新しい視点で宗教や哲学に取り組む人も多いでしょう。
冥王星が山羊座に入った2008年・2009年頃、人々の歴史観が大きく変わるような出来事が起きました。
まず、2008年冥王星が山羊座に入宮しいったん射手座に逆行していた頃、リーマン・ショックが起こりました。
そしてバラク・オバマ氏が大統領選に当選し、2009年1月には黒人で初のアメリカ大統領となりました。
2009年8月には自民党が結党以来初めて衆議院の第一党から転落し、政権交代が起きました。
その後自民党は政権に返り咲きましたが、これらの出来事は人々の歴史観を刷新しました。
2015年の安全保障関連法案の成立は国防政策の一大転機にもなり得る出来事でした。
また2009年頃から有名人の薬物使用による逮捕が目立つようになり、社会的モラルが問われました。
薬物使用による有名人の逮捕はそれまでにもありましたが、山羊座・冥王星時代には社会的影響力の強い有名人(※)の逮捕が多く、世間に大きな衝撃を与えました(※酒井法子(’09)、ASKA(’14)、清原和博(’16)など)。
2011年には東日本大震災により社会が危機的状況に陥りました。
冥王星が山羊座に位置するのは発見以来初めてのことであり、2016年現在も進行中であるため総括はできません。
しかし現在までに社会状況や歴史観を覆す出来事がたくさん起きているため、このような流れは2023年まで続くと考えられます。
より個人的なレベルでは、この時代に生まれた人は仕事や経済面で大きな困難に直面し、勤める会社の倒産などを経験する人が少なくないでしょう。
しかし、もはや社会には期待できないというギリギリの状況の中、人と人との温かな繋がりがよみがえり、ここに経済的な活路を見出します。
また、全く新しい業種を生み出すような人が登場する可能性があります。