月は地球の周りを公転しています。
公転する月の円軌道は、実は完全な円ではなく、下の図のように楕円です。
楕円は二つの定点からの距離の和が一定な点の軌跡、と定義されます。二定点を楕円の焦点といいます。
月がその軌道上で地球から最も離れる位置を月の遠地点といいます。
月の遠地点にもまた、月の公転軌道上を周る周期があり、およそ8年10ヶ月です。
(ここまで天文学的な解釈)
(ここから占星術的な解釈)
リリスは月の遠地点といわれています。ただ、実際の遠地点ではなく、任意の遠地点における、地球でないほうの焦点を表しています(上図の★の位置)。
月の公転軌道の場合、楕円の焦点の一つは地球。もう一つの焦点がリリスなのです。
遠地点がない円は正円なので、二つの焦点はありません。二つの焦点がある円は、正円ではないので遠地点があります。つまり、遠地点と焦点は表裏の関係です。
月の遠地点と同様に、リリスの周期も8年10ヶ月です。
リリスは目に見える物体ではなく、数学的に計算されたポイントです。
月は心を表します。
心の遠い地点といえば何を連想しますか?
深層心理ですね。
地球上にいる私たちが意識しやすいのが心とすると、意識しにくいのは深層心理です。深層心理は楕円の中心を隔てて、地球の反対側にあります。それがリリスです。
地球とリリスの延長線上に月の遠地点があり、遠地点では月が小さく見えます。小さい月は明るさが陰るので、リリスはブラック・ムーンとも呼ばれます。
実は占星術でリリスと呼ばれるものは4つ程あります。
1.ブラック・ムーン
2.ダーク・ムーン
3.小惑星リリス
4.恒星アルゴル
当サイト『結婚相手の選び方』で説明するのは1のブラック・ムーンです。占星術で一般的なのがやはりブラック・ムーンだからです。
ネットや書籍の情報には2のダーク・ムーンをリリスとして言及したものもあります。そのため混同がないように、種類を記載しました。3と4はかなり専門的です。リリス関連の洋書(ページ最下部参考文献)などで言及されています。
リリスには平均位置と真位置があります。
ドラゴンヘッドにも平均位置と真位置がありますが、位置は殆ど同じです。
しかしリリスの平均位置と真位置は30度まで離れることがあります。
そうすると、当然ハウスが異なったり、サインが異なったりします。
どちらのリリスを信用すればよいのでしょうか。
結論からいうと、定説はないようですのでフィーリングに合ったほうを信用してください。
私は両方信用しています。
両方信用していますが、どちらかというと真位置を重視しています。
そして、もし平均位置と真位置でサインやハウスが異なるのであれば、リリスの性質が分散するとみなします。
平均位置のリリスと真位置のリリスの意味の違いははっきりとは分かりません。
実際問題としては、両方のリリスを出せるホロスコープのサイトは限られています。
おそらく、平均位置と真位置を出せるのはアストロディーンストだけでしょう。
くまなく調べたわけではありませんが、ネットや書籍での情報をみていると、どうやらアストロディーンストだけのようです。
リリスの情報が少ない理由
私なりに考えた理由は、おそらく、
・(個人のなかで)リリスの影響を感じにくい
・(そのため)リリスの解釈が難しい
からだと思います。
一方、『結婚相手の選び方』で取り上げた理由は、
恋愛や結婚など人間関係におけるリリスの影響の大きさを実感したからです。
恋愛などの人間関係のもつれには、リリスが絡んでいる可能性があります。
リリス自体は、単なる月の遠地点です。
もっといえば、数学的に計算されたポイントです。
なぜ、単なる計算上のポイントが、人間関係のもつれを引き起こすのでしょうか。
なぜなら、月が心(感情)を表すとすれば、月の遠地点であるリリスは、心の遠い地点つまり深層心理を表すからです。例えば、こういう状況を思い浮かべてください。
友達に相談をもちかけられた。
その相談で、今まで知らなかった友達の過去を知った。
それは幼い頃、父親に性的虐待をされた過去だった。
それが原因で、今も男性不信のままでいる。
どうしたらいいだろう。
こういう相談をされたら、どう感じますか?
友達の闇を知ってしまった、と恐ろしくなるかもしれません。
ある人は、それまでの印象とのあまりのギャップに、友達との距離を置きはじめるかもしれません。
ある人は、深刻な体験を話してくれたことに自分への信頼を感じ、むしろ絆が強くなるかもしれません。
深層心理には得体の知れない闇があります。
この闇がリリスなのです。
闇を知らずに付き合っていたとしたら、友達や恋人の「本性」を知った時、関係がもつれ始める可能性がありますよね。
これがリリスの影響です。
人間関係におけるリリスの影響にはパターンがあって、
1.平等を主張する
2.相手の支配を試みる
3.相手に脅威を覚える
4.相手を離れる
5.相手への怒りが残る
と進行します。
これは聖書におけるアダムと、その最初の妻リリスとの関係として描かれる物語でもあります。
聖書にリリスは登場しませんが、リリスの存在があったと解釈する系統があり、伝承されてきました。
リリスという名前はこの物語に由来します。
さてリリスは、友達の例え話のように正直には打ち明けてくれません。
なぜなら、心の奥深くにいるからです。
そしてリリスは、自分でも意識できないからです。
でも、例え話のような自分の過去ならわかるんじゃないかと思いますよね。
自分の過去がなぜ自分でもわからないかというと、この過去には前世が含まれるからです。
月は過去の記憶を表しています。それならば、月の遠地点であるリリスが「遠い過去」の記憶を表すと考えるのは論理的ですね。遠い過去を一般には前世といいます。
リリスがどんな場面で現れるか、どのように現れるかは、ハウス・サインの説明ページをご覧ください。下部にリリスのサイン・ハウス・シナストリーの説明ページへのリンクを貼っています。
シナストリーとは一対一の人間関係を見る場合に、二人のホロスコープを重ね合わせて相性を見る方法です。ここではリリスと主要5天体(太陽-月-水星-金星-火星)との関係だけに言及しています。
リリスの影響は、自分の中では感じにくいものですが、相手とのシナストリーでは、ハッキリした影響が見える可能性があります(自ずと客観視できるから)。
自分のリリスと相手の主要天体、自分の主要天体と相手のリリスを調べてリリスとの関わり(アスペクト)があった場合、相手の闇に左右されていた可能性があります。
ただし リリスとの関わり=悪い関係 では決してありません。
おしどり夫婦と呼ばれるカップルでも、リリスのアスペクトを持っていることがよくあります。
なぜかというと、リリスの絡みを補って余りある他の天体同士の良好な関係があるからです。
リリスは、ただの、月の遠地点です。
リリスそのものは、問題を引き起こしません。
人が、リリスの闇に触れた時、過剰な反応をして相手を傷つけることがあります。
人が、問題を引き起こすのです。
(リリスを「闇」と感じるか、ただの「経験」と感じるかも、人の感じ方次第です。ここではイメージしやすいように敢えて「闇」という言葉を使ってきました。)
簡易的なリリス表(平均位置)へのリンクも下に貼りましたので、軽く試してみるのもよいと思います。(平均位置のリリスは常に順行しますので、期間の初め頃であればサインの初めの度数、期間の終り頃であればサインの終わりの度数と予想できます)
それよりも、アストロディーンストで出した方が早いかもしれません。
アストロディーンストでのホロスコープの作り方は「ホロスコープの作り方」で紹介しています。
ここでは、加えてリリスの出し方を説明します。
「ホロスコープの作り方」ページ下部に↓の引用部分があります。その続きから説明します。
引用ここから↓↓↓↓↓
■小惑星などを表示する
チャート選択画面の一番下までスクロールするとこのような表示が現れます。必要に応じて、小惑星や「南の交点(ドラゴンテイル)」、アスペクトラインなどを選択して表示できます。スマホではチェックボックスにチェックして選択する場合もあります。
引用ここまで↑↑↑↑↑
平均位置のリリスは下の青い囲みのリリス(Lilith)を選択します。
真位置のリリスを選択するためには、一番下の赤い囲みをクリックし新しいページを開きます。
そうするとこのようなページが出てきます。
一番上のボックスにチェックを入れます(“True” Lilith / Black Moon と書いてありますね)。
そのあと右下の「クリックしてチャートを表示」ボタンをクリックします(スマホでは隠れてることが多いので、出てきたページを右上の×マークで閉じるか、上にスクロールして上方の同じボタンをクリックしてください)。
チャートに2種類のリリスが描画されましたね。
この人は平均位置のリリスは双子座の25度あたりに、真位置のリリスは蟹座の9度あたりにあります。2種類のリリスとも一応5ハウスに収まっています。
リリスに関して特にいえることは、
「リリスは自分で感じて、自分で理解するしかない」ということです。
先ほども言いましたが、自分の中のリリスの影響は微かにしか感じられません。
かすかな影響を感じられるのは、自分だけです。
一方、シナストリーにおける影響はハッキリと感じるはずです。
なぜなら、
気になっていたあの人のリリスと自分の月が合だった
というような実例に、誰もが向き合うはずだからです。
しかし、あの人と自分の関係をリアルに顧みることができるのも、やはり自分だけなのです。
参考文献
古代占星術リリス―太古の記憶の封印を解く 霜月マイア (著)
Lilith: Healing the Wild (英語) Tom Jacobs (著)
Lilith: Four Dimensions of the Cosmic Feminine (英語) M. Kelley Hunter (著)