10天体の基本的な性質についてみていきます。
それぞれの周期や対応年齢・象徴的なキーワードを表にまとめました。
※太陽の周期とは、本来は地球の周期です。
一般に周期が短い天体ほど身近な事柄を表現します。周期が長い天体ほど、人間や世代の存在意義に関わるような深遠な事柄を表現します。
つまり、土星以遠の3天体は一つのサインに10年から30年も居座ることになり、同世代では殆どが同じサインになります。こうなると個性への直接の影響は少ないのです。しかし他の天体とアスペクトがある場合、人間性に非常に大きな影響を与えます。
☆月【感情の快・不快などの反応パターンを作り出す】
約28日周期で公転する月は、地上に生きる私たちの生物的リズムに直結し、月経や肌の細胞が入れ替わる周期などに反映されています。周期が短い天体は、日常生活で毎日繰り返すような変化の早い物事にも関係します。
月の影響力は発達段階の早いうちに心身へ浸透するため、0才~7才の乳幼児にその影響が現れます。多くの人がこの時期に、母親との密接なつながりの中で日常生活の習慣や基本的な体質、感受性や感情の傾向を育てます。それらの傾向についても月から読み解けます。
月は心理学でいう「インナーチャイルド(内なる子供)」と関係するといわれます。いくつになっても、ひとりでいるときや家庭の中では、乳幼児期に身につけた習慣や感受性のパターンが無意識に出てきます。そういう意味で月は「無意識の自分」「自然体の自分」を表すともいえます。
また、月は太陽の光を受けて輝くことから、家庭の中で夫をサポートする立場としての妻や女性一般を象徴しています。月は受動性や女性的な柔らかさにもつながりますが、ほかの要素との関係によっては、それを弱さや不安定さとして解釈することもあります。
☆水星【神経作用や知性の発達をつかさどる】
水星は、太陽に最も近い軌道を公転する天体であり、地球からの観測では、黄道(太陽の見かけの通り道)上で最大28度しか太陽から離れることがありません。そのため、占星術的には水星は太陽に従属する天体といえ、太陽が表す「公の場」へどう適応するかというテーマが深く関係してきます。
具体的には、水星の年齢域である8才~15才の時期に、学校という公の場でその訓練を行うことになるのです。そこは、家庭環境の一歩外であるため、月が象徴する自宅での習慣や個人的な感性を押し通すことはできません。先生や同級生に通じるように言葉を選んで会話し、気分が乗らないときであっても、知的な判断のもとに勉強などをこなす必要があります。そのため、水星は本人の会話・言語能力・知性などを表すことになります。
また水星は、太陽のまわりをすばやく動くその見かけから、知覚や神経系の働き、近距離の移動、商行為などを意味してもいます。
☆金星【感受性の華やかさを形成する】
金星は、五感を通じた楽しみ全般に関連し、本人の美的センスやファッションの傾向、音楽など芸術に関する好みを表します。
また、五感の楽しみという点で、恋愛や性の傾向にも関係します。日常に華やかさを与えるという意味で、金星はぜいたくさやお金とも関係します。
男性のホロスコープで金星は、「恋愛対象」としての女性の好みを表します。月は男性にとっての結婚相手、妻の意味合いを持っています。女性のホロスコープで「恋愛対象」を示すのは火星です。
金星は(特に女性の)恋愛の「スタイル」を表しています。同様に月は女性の結婚生活のスタイルを表します。
金星の年齢域である16才~25才は、趣味や恋愛を通じて感覚的な楽しみを味わいつくす時期。そのような楽しみは生きる上での必須事項ではありませんが、人生に潤いを与えるものです。
☆太陽【地上意識からみた希望や発展の方向性】
太陽は、公の場で生きていく上での目的や目標に関係します。月が「自然体の私」とすれば、太陽は「努力して向かおうとする私」です。つまり太陽は「持って生まれた能力」ではないのです。
本来は地球の動きを「太陽の動き」に置き換えている「ある意味で空想の天体」が占星術の太陽であり、その実態は、目標や希望といった「ある意味で幻影といえるもの」なのです。ただし、太陽はもともと地球自身の動きであるがゆえに影響力は絶大であり、ホロスコープ上の太陽を目指して人生は展開します。
太陽の年齢域(26才~35才)に学ぶべきは、それまで主に個人の活動に用いられてきた月・水星・金星を、太陽が示す公的な目的のために使うことです。その年代は大人としての義務と責任を身をもって知る世代であり、「感情(月)」に振り回されることなく「職業上の技能(水星)」を身につけ、一定の「社交性(金星)」も身につける必要があります。ただし、これらの天体と太陽の間に困難なアスペクト(天体間の影響角度)がある場合、調和した連動はもたらされません。
なお、女性のホロスコープにおいて太陽は父や夫(男性意識)を表してもいます。
☆火星【対外的な主張ができる】
他者や社会に対してNO!と主張する力を、火星はつかさどります。 火星の働きが弱い場合、社会の中で個人の権利は無視されたり、周囲からの圧力に勝てない生き方になります。たとえば、火星が弱い人は多くいじめられっ子になります。ストーカーに悩まされるのも火星の(弱さの)影響です。
他者に対する個を守るためにはどうしても火星の力(積極的な否定)が必要であり、そのために武器や刃物が火星の象徴とされています。しかし、太陽の表す人生の目的と火星が連動していない場合は火星の攻撃性が暴走する場合があり、そのとき暴力や事故という現象が現れます。
女性の場合、火星は結婚する前、あるいは婚外の男性とのかかわりを表します。特定の男性が性的な対象とみなされているときには火星ですが、その関係が継続して、性的対象よりも生活の中になくてはならない存在として組み込まれた段階で、火星から太陽へと相手の男性の役割が変わります。
また一般的な意味での性欲やセックスの傾向をも、火星は示しています。
☆木星【 YES(肯定)の意識として拡大する】
火星が「積極的・否定的」だとすると、木星は「受動的・肯定的」です。個人の権利を主張し、他者へNO!を言い渡す火星に対し、太陽系最大の惑星である木星には他者(社会)の利益を尊重し、他者をYES!と受け容れていく寛大さがあります。
社会的活動には火星・木星・土星の3つの働きが必要とされます。木星だけが強い人は、社会の要求に何でも応えてしまい、いつまでも雑用をさせられるような従順な人になってしまいます。「必要があれば他者に対してNO!を突きつけ(火星)」、「規律性や目的性を身につけ(土星)」た人が、木星のおおらかさを発揮すると、社会において発展・拡大していくのです。
木星は幸福感とも深く関わっています。ホロスコープ上の木星の状況は、本人がどういった物事から幸福感を感じられるのかを示しています。しかし、正反対の作用を持つ火星と木星が年齢域においては続いていますので、実際には火星的な性質から木星的な性質への移行はスムーズにいかない場合が多いのです。
自立して個の力を十分に発揮したいという「火星偏重」の人は、木星的な発展・幸福感を自らの意識の中で封じ込めてしまうのです。たとえば、キャリアウーマンと呼ばれる人が、自らを社会に押し出すこと(仕事・出世)に夢中になり、結婚が遅れるという状況にも表れます。実際に木星の働きが発揮されるのに、木星年齢域(46才~55才)まで待たなければならない場合が多いです。
☆土星【社会的な規律やモラルを示す教師役】
土星は人生の達成イメージに基づいて、その人に善悪判断や常識感覚を与えます。
土星の年齢域(56才~70才)にまで成長すると、土星に替わって本人が教師役になり、家庭や社会の中で「人としての規範」を示すようになります。
ただ、そこまで人間性が成長していない若いうちは、土星の規制に対して苦手意識が先行します。そのため、ホロスコープの土星が示す物事について、それを避け続けたり、反対に制約を打ち破ろうと行き過ぎた行動をとってしまったりします。
土星には物事を制限する働きがあり、アクセルに対してのブレーキのような制御を与え、人間に安定感や根気をもたらします。しかし、他の天体との関係において土星の働きだけが際立つと、頑固、停滞、憂うつ感といった面が強調されることになります。その結果、なにかを失敗したり、貧乏になったりというマイナスの現象が現れます。
ただし、木星が担う社会的な発展性を、現実の世界で形にするのは土星の働きであり、そのように他の天体と調和している場合は、土星のプラスの現象が現れます。
土星は父親や(特に男性の)年長者を表すこともあります。土星の状況から、彼らが人生にどう関わるのかが分かります。
☆天王星【個人を解放する力】
土星より遠くにある天王星、海王星、冥王星はトランスサタニアン(土星外天体)とよばれます。公転周期が長い土星外天体は、とても強い影響力を持ちます。
天王星は他の天体と違い、公転軸に対して自転軸が横倒しになっている奇異なる星です。そのため、天王星は新奇さや独自性、ハプニングの象徴とされ、マイナスに傾くと、エキセントリック、変人という意味になります。
また天王星は、個人の意識を開放するという役割も果たします。土星は安定した枠組みを与えてくれますが、それが息苦しくなったとき、天王星の異質性が風穴を開けてくれるのです。
土星は山羊座の支配星で、天王星は水瓶座の支配星でした。山羊座が今ココという空間的な集団意識にしばられていたのを、水瓶座は取り払い、共時的な集団意識に開放しました。ローカルな社会の枠組みを捨て、より普遍的な意識へつながることを可能にするのが、天王星なのです。
そのことから、天王星はインターネットなどのテクノロジーや、外国人、外国文化、自由業なども象徴します。
☆海王星【潜在意識から精神的活力を引き出す力】
天体の公転周期の一回転は、その天体がもたらす意志のはじまりと終わりを表します。人の平均寿命をはるかに超える公転周期を持つ海王星・冥王星の表す内容は、個人の日常的な意識では把握しきれません。それが示すものは、人間がコントロールできない領域といえます。海王星と冥王星は人智を超えた力と考えられるでしょう。
海王星は、太陽が示す自己意識や土星が示す社会的な規律意識が融解した先にある領域を示します。魚座の支配星である海王星は、魚座が空間にも時間にもとらわれない意識を獲得していったように、精神的な面で人に新しい力を吹き込み、リフレッシュさせてくれます。そこでは精神的な癒やしや未知の興奮、新しい希望などが生まれてきます。
眠りに落ちる瞬間には、自我意識が潜在意識へと溶け込みます。夢見の力は海王星が人間にもたらす能力です。一流の芸術家や創作者は夢の世界で得るイメージを上手に表現しているのです。金星の芸術性は単に審美的なだけですが、海王星の芸術は未知の何かをこの世界にもたらし、人々の魂を揺さぶります。
精神的な広がりをもたらすという意味で、海王星は霊感や宗教にもかかわってきます。そのような未知なる力を受け容れる体制が人間の側で整っていない場合、海王星の力はマイナスに働き、妄想、虚偽、犯罪といった現象として表れます。
すなわち、自己意識(太陽)や社会的な達成イメージ(土星)が確立していない場合は、それらをなし崩しにしてしまう力を、海王星は持っているのです。
☆冥王星【限界における冥界との接点】
海王星のところでいったように、海王星と冥王星は個人の日常的な意識では把握できない影響を人間に与えています。公転周期の比率が正確に2:3なので、共鳴しあっている天体ともいえます。つまり海王星と冥王星は、はっきり分かれることなく、連続的な体験として影響するとも考えられるのです。
冥王星は太陽系の外殻にあり、銀河的な秩序との接続弁となっており、私たちの魂の帰るべき場所、つまり「魂のへその緒」がどこに接続されているのかを示しています。その作用を私たちが自覚することはできませんが、冥王星はほかの天体とアスペクトすることで強力な作用を発揮していきます。
冥王星は、太陽系の一番外側に位置していることから、死と再生という極限性を表しています。これは、限界ギリギリに来て自分の中の何かが死んだときに、それを新しい形で再生させる力、ということができます。プラスの作用では、根本的な変化、くじけない底力と解釈されます。マイナスの作用としては「限界ギリギリ」という部分が強調されるため、極端さ、破壊、強制力、強引さ、非道徳、非合法という面が現れてきます。
こういう場合でも実は再生のエネルギーは注がれているのですが、冥王星とアスペクトする天体との相性が悪いために、破壊的な表れ方をしてしまうのです。 ただし、冥王星自体にこのような作用があるのではありません。冥王星にある安全弁が外れた結果、未知の力が銀河系から持ち込まれ、人間に否定的な面が表れる可能性があるということです。しかしいずれにしても中途半端になりにくく、行き着くところまで行くことになります。